白馬ペアマッチレース参加レポート

廣田 直文
廣田さんがレース中に他のチームの方を写した写真をインターネットDISK上に公開しています
【こちらからどうぞ】

陸上競技経験のない私にとってランニングで山道を走るステージがあるアドベンチャーレースは、別 の銀河の話のように思っていました。
 昨年の秋、たまたま立ち寄った新宿小田急百貨店のワコールCW-Xショップで写 されていた王滝村のアドベンチャー・レースのCMビデオを観ているうちに同化されてしまい、また偶然にもアート・スポーツさんからアドベンチャー・レース参加への誘いをきっかけに、アドベンチャー銀河にワープしてしまいました。さらに半年後、白馬のアルプスの峰を走る異星人に進化しているとは…。
  白馬へのエントリーのきっかけは、今考えてもいい加減なもので、写 真でしか見たことのないアルプスへの多少の憧れもあり、御岳より壮大な景色が拝めるのでは、という興味本位 程度のものでした。事実、雲中を走り抜けた時の紅葉と山頂部のうっすらと雪化粧した岩肌のコントラストは、期待したそのものの風景でした。この感動だけで胸一杯になり、その後はレースに集中することが出来ました(疲労と下りの恐怖から周りが見えていなかっただけ?)。
  登山経験も山岳マラソンも経験のない自分の技量 レベルでは、気象条件によってはリスクが大過ぎる気がして思い止まることもありました。白馬について無知の自分は、インターネットで情報を収集している間にも、“完走できるか?”と不安は大きくなる。反面 、走り終えた“達成感”に期待する感は消えることもなく、結果として達成感への期待が勝ることになった。

  10月4日、我々は2チーム4名で白馬村に昼過ぎに到着した。埼玉 から車で約3時間、王滝村に比べると非常に近かった。天気予報では、上空に寒気が入ると言っていたが予報は晴れのはず。しかし、白馬に近付くにつれ雲はドンヨリと垂れ込めてきた。気温も徐々に下がり肌寒く感じる。雨も時々ちらつき始めた。スタート地点の五竜スキー場の上の方は、すっかりと灰色の雲で覆われ、山頂は全く見えない状況だった。昼食後、民宿(久平荘)にチェックインした。玄関や部屋にストーブが既に置いてあり、明日のレースの寒さを予感させた。(朝4時過ぎの朝食に、レース後の入浴まで、お世話になりました) 午後2時すぎ、エスカルプラザで受付をすませた。今年3枚目のセルフTシャツを貰ったが、全て色が異なっていたのは、少しうれしかった。スタッフの方の話によれば、山頂付近は雪で、既に積もり始めているということだった。明日の午前中だけでも晴れてくれれば、絶景を拝むことが出来そうな状況は整っていた。
 レース当日、すっきりとしない空模様、スキー場の上の方は雲の壁で先が見えないが、所々雲の隙間が見えた。天気図からは、山頂は雲の上にあることが期待できた。セルフお馴染みの6時スタート。スタート地点に集まった面 々は、自転車競技をメインにしていた自分には、ランナーに囲まれると外国に行ったような違和感を感じた。
  定刻どおりのスタート、今回はいつもの黄色いパワーバー・カーの先導はない(ちょっと寂しい)。一斉にゲレンデを駆け上がっていく。上へ登れば登るほどに傾斜は増してくる。当然だが上のゲレンデは上級者コース、“初・中級者立ち入り禁止”の文字が、山岳マラソン初参加の私の脚は、トレーニング不十分なため徐々に大臀筋からハムストリングスにかけて熱くなってきた。今までにない部位 の疲れだった。徐々に周りが明るくなってきた頃、うっすらと雲の隙間から唐松岳?が、思わず足を止めて、撮影した。(アルプス展望リフト駅付近?)
 スキー場を登り切ると、木々も低くなり視界も開けると同時に、細い登山道と階段が疲れ始めた脚を一段と重くさせた。しかし、地蔵の頭付近からは紅葉の美しさに、「これぞトレランだ!」てな具合で、精神的に疲れは一挙に吹き飛んだ。記憶の中では、地蔵の頭から第1C'Kポイントの小遠見山までは、一番気持ちよく、景色を時々堪能しながら走れたと思う。
  第1C'Kポイントで、聞き慣れた業界用語を連呼するグループを発見した。姿からしていかにも同じに臭いがする。日頃の鍛錬の仕方が異なるJGSDFグループだった。格好からして気合い十分だった。Tシャツ&短スパ姿に、寒くないのかなと思う私軟弱JASDFとは違った。 途中、ゴーグルを落としてしまったことに気付いたが、諦めていたところ後続のチームの方に拾っていただきました。この場をお借りして、お礼の言葉を述べさせていただきます

第2ステージ
15分のトランジェントタイムを終え、五竜山荘へ向け再スタート。途中、西小遠見山付近に鎖場があるが、ここは無くても登れる程度の難度であった。しかし、足場が悪くなる一方の登山道に、景色を楽しみながら走れる余裕はなくなってきた。また、山頂に近づくにつれ気温も下がり積雪の量 も増してきた。九州出身の私には、踏みつけとも溶けないさらさらの雪は初めてで、思わず手に取り食べてみた。
  なんとか体力も使い果たさず第2C'Kポイントに到着した。ここで、ポリバケツに汲んである水を給水できたが、まだキャメルバックには第3ステージ分の水が入っているようだったので給水はしなかった。体内のキャメルバックの方は、気温が下がってきた分、満タンに近い状態だったので空にした。
  ここで、思わぬトラブルが発生した。デジカメのバッテリーが突如空っぽに。アルカリ電池が、この程度の気温でダメになるとは思わなかった。いつでも撮影できるようにとバック・バックの胸にカメラを装着していたのだが、外気で冷えたのだろう。これからというときに、保温対策を怠っていたためだが、あきらめてジャージの後ろポケットに入れて走った。したがって、第4C'Kポイントの八方池山荘までの間の写 真が1枚も撮影できなかった(実際には撮影できる余裕などない状況だった)。

第3ステージ
  このステージは、本レースの最大の難所が待っていた。大黒岳から唐松岳にかけては、片足を置けるだけのスペースしかない鎖場が待っていた。霧氷の美しさと岩が崩れる場面 を目にしながら、凍り付いた鎖を思わず握りしめる手に力が入る。赤丸を見つけながら一歩一歩進んだ。この区間は、情けないが景色を見る余裕もなく岩肌と岩に描いてある赤丸しか脳裏に残っていない。
唐松山荘を過ぎると、八方尾根から登ってくる登山者が多くなった。ここからは、走りやすいものの、所々岩がごろついており、巧みなフット・ワークを要求されるが、この程度であれば、トレラン初級者の私にでもそこそこ走ることが出来た。また、他のアドベンチャー・レースと異なるシーンに出くわすことにもなった。王滝のレースでは一般 人の立ち入りが禁止されているところを走るので応援はない。ペア・マッチは登山道を走る。すれ違う登山者が応援してくれるのである。
  すれ違いざまの僅かな時間に、「どこから登ってきたの」「どこまで行くの」と、走り行く我々に気軽に声を掛けてくれる。ご丁寧にトップとの時間差までも教えていただいた。我々も走りながら、簡単にレース内容を大声で答えながら走った。まるで選挙カーのように、「失礼します」、「ありがとうございます」の連呼。唐松山荘から八方池山荘までの間は、かなりハイテンションで走った。幸い、私たちは好意的な人に出会えたようだ。

第4ステージ
  振り返れば、この区間の情報を収集することを怠っていた事が、大きなミスコースに繋がった。スキー場には過去3回、しかもリフトとゴンドラの違いすらわからなかった自分の知識で、かつ夏のスキー場は初めてだった。スキー場の区別 が付かずロストポジションしてしまったため、2度もスキー場を登ることになってしまった。さらに、2週間前に王滝MTB100KMを走り終えたばかりの膝が、スキー場の激下りでついに悲鳴を上げた。右足が着地するたびに膝の外側に痛みが走る。快走するペアに待ってもらいながら、スキー場を下った。幸いにも下るほど勾配は緩やかになるため、なんとか救われた。スキー場を無事下り終えると、ゴールのパワーバーの旗が風になびいているのが見えた。ゴール・ゲートは数十段の階段を上ったところだが、ゴールを目前にすると、ラストパワーに着火、階段を一挙に駆け上がり、そのままゴール・ゲートを潜った。
  予想もしなかった午後12時前に、無事ゴ44ール。
  今回の自分のペアは、山岳レース等の経験が十分な方だったので、自分一人では走れるペースではなく、ペース配分等参考になることが多かった。激下りを滑り降りる足の運びだけは、容易に真似できるものではなかった。見る見るうちに離されてしまった。 また新しい分野の競技を無事終えた達成感は、セルフ04Tシャツを、何枚集めることが出来るか、挑戦してみようと思う気持ちにさせてくれた。
参考までに 「コース断面図」