セルフディスカバリーアドベンチャー
クロスマウンテンバイク100k参戦記

「ゼッケン4番 中尾 亮弘」 走ってみないと分かりません

 5月中旬に去年ある自転車雑誌の記事で知ったこのレース。100kほぼ林道のダートコースと いう何とも魅力的で何とも馬鹿げたレースだろうと興味をもち、ゴール デンウィークのMTBレースを終えてから開催者のパワースポーツのホームページに アクセス、9月開催と知りとりあえず申し込みをする。6月に入ってから ホームページで100kの申し込みが締め切られ、エントリーが済んだと思いきやキャ ンセル待ちの通達が!空きができた事を知らされる開催一か月前でやきもきする事になる。

9月19日
 金、土曜日は有給を取り金曜日のファンランに参加するため木曜の夜11時に出 発。途中高速の恵那サービスエリアで仮眠をとりつつ9時に会場になる松原スポーツ公園に到着。
 スタッフの方が会場の設営で忙しく動き回っており、正午のファンランが始まる 時間まで再び仮眠。目が覚めて時計を見ると始まる直前になっており急いで 準備して20人ほどでスタート。コースとは別 の林道で川遊びや昼食をとり、頂上付 近まで登ってからダウンヒル。途中インストラクターの人からレースの情報を聞き作戦を練る。  松原に戻ると選手が続々と来ている。受付を済ませ、明日は寒くなりそうなので ODBOXのブースでアームウォーマーと厚手のレーサーパンツを買い、それとワコールのブースでCW-Xの9分丈スポーツタイツをモニター使用で借りる。 ファンランで一緒になった人と喋りながら晩ご飯にスパゲッティを茹でて食べ、開会式を待つが暗くなるにつれて雨が…。開会式は土砂降りになり相当不安 に。パーティーで出されたビールとおかずを口にして車の中で就寝。何度か目が覚めるが雨が気になる。

9月20日
  4時前に起床。雨はなんとか降ってない。お湯を沸かしてカップヌードルのビッ グを二つ食べる。仮設トイレに行くと既に長蛇の列。何とかひねり出してスタート集合場所に行くとここも既に選手で一杯。スタート位 置は早い者順なのでと にかく開いてそうな場所に自転車を置く。スタートが近付くにつれ緊張感が。周りの人に聞くと過去に完走できたりできなかったり。本当に完走できるだろ うか?
 スタートの6時前になって車道に移動してスタートゲートの前へ。さすがに600人 近くの参加者なので周りは自転車だらけ。バリバリのレーサーから普通のおじさんまでいろんなスタイルでいる。考えている合間そうこうしているうちにスタート!

CP-1まで
 スタート地点から林道入り口まで先導車について地元の人の応援を受けつつ長い 自転車乗りの隊列が移動する。結構ペースが速く鋪装ながら傾斜がきつい。5k・30分程走ってからゲートを過ぎて先導車が止まっている横を右に曲がりつつ本格的に気合いが入る。スタートから12kまで登りと聞いているので焦りはないが、始めの頃なので周りはペースが速い。しかも、しょっぱなから食 料を入れて重くなっていたウェストバックが背中から離れて腰が痛い。何度か止まってベルトを締め直すがなかなかいい位 置に来ない。その間に抜かれていくので流れに乗るためだましだまし走る。途中パンクして止まっている人もちらほら。これから先は大丈夫なのか。
 10kのボートを過ぎてしばらくするとダブルトラックの下り。周りも気合い十分 でとばすとばす。ここから下りで抜いたり登りで抜かされたりを繰り返す。途中ピンクのフルリジット・カンチブレーキのなんとも古めかしいMTBに抜かされる。隣の人が、
「よくあんなので走っているな」
「本当、こっちはこんだけ金かけているのに負けたらどうしよう」と私。
「まあこっちは後半勝負だし」
 そんな会話をしつつ次の下りでピンクのMTBは目の前で転倒。自転車を脇に寄せ て転倒者の「痛い!」という叫びに「気をつけて!」と声をかけて先に進む。  20k地点から道は一気に荒れてくる。川沿いを走るが巨大な岩が道に何個か転 がっていてそして落石注意の看板。前日の雨を考えると冗談ではありません。川から離れてから登りに入ると昨日のインストラクターに抜かされる。声をかけるとパンクして遅れたらしい。すぐに視界から消えてしまった。そして主催者の言っていた急斜面 を登ってCP-1へ。4時間の制限時間を3時間ちょっとでクリア。カロリーメイトを食べてCP-2へ。

CP-2まで
 CP-1を下ってからは森林地帯を緩やかなアップダウンを繰り返す。ウェストバッ グの位置は安定するまで締めたし体の動きも良い。少しずつ気温は上がっているが朝から着ているレッグウォーマーもタイツも脱ぐほどではない。快調快調。
 50k地点を超えて左手に三浦貯水池を見て平地を走っていると、どうもリアタイ アの空気圧が低く感じる。チューブレスタイアなので元々低圧(2.4気圧)にしていたが、やはり変だ。止まってミニポンプで空気を入れると無情にも空気が漏れる音が。チューブレスだとパンクしてもしばらく走れるのか。とにかく直さなきゃ。今回パンク対策にタイヤのチューブ(チューブレスタイアはパンクした場合チューブを入れることができる)とそれにバイクのチューブレスタイアを修理するためのムースボンベがある。どちらにするか悩んでタイヤを外す ロスを考えるとムースを使う事に。フレンチバルブにアメリカンバルブアダプターをつけ、そのバルブにチューブにつながったボンベを取り付けてボタンを押す。勢い良く白いムースがタイヤの中へ。しかし、空気の漏れる音はするがパンクした穴が塞がる気配は無い。説明書を見ると入れたらすぐ走れと書いてある。空気が漏れつつ急いで走る。走りながらタイアを見るとムースが穴から出ているではないか。これで塞がるのか。一度止まりバルブに触るとムースが出てくる。これでは空気圧が測れない。空気の漏れる音がしないのでとにかくムースを信用しよう。
 池の終わり頃に昨日ファンランで一緒になった人を見つける。風景の良さを会話しつつトラブルについて聞くとパンクしていない。パンクしている間に抜かれた事を考えるとトラブルには結構時間を使ってしまう。その人とはタイヤが気になり何度か止まっているうちに離れてしまった。
 池が終わるとCP-2まで延々と続く登りに。湧き水で顔を洗い走ると隣の人から
「クランクが緩んでいるのでアーレンキーを持っていないですか」と尋ねられる。
持っていると答えると次のCP-2まで一緒に走ってから貸すことにする。しかしこのCP-2まではなかなか着かない。着かない間会話するのだが相手から、
「何でこんなとこ走っているのか自分が不思議に思いませんか」 と尋ねられる。
「会社に行くのと一緒ですよ。それにここには志願してきているので、そしてこんなに思いっきり走れるからすごく楽しい」 とよく分からない答えをしてしまう。
 チェックポイントに書いてある60kの看板を超えてもCP-2は無い。焦るがどうしようもない。周りに聞くと登りきってから降りた所にあるらしい。降ると谷間にCP-2がやっと見えた。

CP-3まで
 アーレンキーを貸して自分は溶けかけたバナナ2本とパンを食べる。時計を見る と11時40分くらい。工具を返してもらってから仮設トイレで用を足す。 スタッフに聞くと大体半分くらいが通 過しているらしい。タイヤの様子を見て出発。
 CP-2からすぐ70kの看板を通過。これで3分の2が終わったか。これからは雑誌の 記事だとまた長い登りらしい。谷間回るように登るのだが山の稜線に走っている人の姿が。なんとなく目安ができて走りやすい?登っていくうちに左手にCP-2が見えるようになる。何人か休んでいるがやってくる人は少なそう。そしてこの辺りから空から水滴が。やっぱり天気は悪い方向に向かっている ようだ。
 登ること一時間近く、三浦貯水池で見つけたファンランの人を再び見つける。声 をかけるがかなり疲労している様子。抜いてしばらくするとやっと下りが。これで楽できると思いきや下り始めるとリアタイヤに張りを感じない。まさかと思い降りてポンプで空気を入れるとやっぱり漏れてる(バルブからムースは漏れなかった)。再び同じ所が穴が開いたのか新しい場所か。ファンランの人に再び抜かされまた悩む。タイヤの表面 を見るとムースが少しづつ出ている。空気を入れる度にムースが出るということはまだタイヤにムースが残っているらしい。 圧縮ボンベも持っているが始めに入れたように一気にタイヤを膨らませた方がいいのだろうか?とりあえず空気を入れていくと音がしないようになった。空気圧を計ると2.2気圧、普段のレースではこれぐらいで走っているのでこれで行ってみよう。
 降りるとずっと下り。前にペースの遅い人がいるが安全に走れるラインから外れ ると石が多い為タイヤの事を考えると突っ込めない。前の人が道を譲ってくれてペースを上げる。軽い登りを走り川を渡り木々の間を下るとCP-3の人に止まるよう声をかけられたのを聞いて、なぜか嬉しくなってしまった。

ゴールまで
 ここから本格的に雨が降り始める。周りの人に先を聞くと一回きつい登りがあり、下ってから少し登って最後はゴールまで下りだと言う。やっと気が安らいで持参したカメラに自分の姿を撮ってもらう。タイヤに空気を2.4気圧まで入れて出発する。
 鋪装を少し走って分岐を左に曲がり登りへ。雨はどんどんきつくなり最後の下りを考えるようになる。この寒さだとカッパを着た方がいいのだろうか。とりあえず2度目の登りが終わるまでこのままで行こう。登りきって下りの間に90kの看板を通 過。二つ目の登りはさっきの距離の半分くらい。下る前にここでCP-2でアーレンキーを貸した人に出会う。話すとリアホイールのスポークが折れた と言う。とりあえずゆっくり走ってゴールを目指すようだ。そしてカッパを着る時間が惜しいのでそのまま突入。気持ちのテンションが高いのか、雨で路面 が濡れているのに信じられないスピードで下る。何人かパスして傾斜が緩くなり始めるとゴールが近いことを感じラストスパート!そして橋の上のゴールの垂れ幕をくぐってゴール!タイマーを見ると8時間を少し回った所を表示していた。パンクしなければ7時間台か。とりあえず満足して雨の中駐車場に戻りました。ああ面 白かった!(コースの記憶は結構曖昧なので参考程度にして下さい)

振り返って
マシン:今回参戦した私の自転車はリヤサスフレームの『'03スペシャライズドFSRXCブレインショック』。フロントサスに『'03ロックショックスSIDレース』。コンポは『シマノXT』をメインにブレーキを『XTディスクブレーキ』。ホイールは『'03XTRハブ』とリムに『マビックX3.1』。タイヤを前に『IRC シラクXCチューブレス』2.1に後ろ同1.95。サドルは『セライタリア フライトトランザム』
 ほとんど今年になって購入したものばかりだが今回のレースには無くてはならないものばかり。フレームは衝撃を受けた時だけリヤサスが動く機能で登りはペダリングロスなし。そして下りは本当に速く走れます。ブレーキは油圧ディスクなのでVブレーキなどのワイヤー式に比べ指が全く疲れない。それに雨でもきちんと効くので安全。タイヤは結局パンクしたが空気圧を高く(3気圧くらい ?)入ればパンクしにくかったかもしれない。ただし、これは乗り手によるので要研究。ムースに関しては事前にテストした方がよかった(タイヤとムースがもったないが)。登りが多いのでサドルは長時間座れるものを。
 自転車を選ぶ場合は登りが長いので軽量なXC系が必須。実際に周りの選手のほとんどがハードテイル・Vブレーキ・チューブタイアで走っているのを考えると力量 があればマシンの差は少ない。ただ、もしものときを考えるとダブルサス・ディスクブレーキ・チューブレスタイアの方がより安全に走れるだろう。 初めて参加する人は予算に応じてショップと相談するべし。

コースコンディションアップダウンの全ては乗れるので担ぎは無い。路面 は車が通るので基本的に堅くしまっているが、状況は変化に富むのでそれ相応のテクニックがいる。パンクしやすい小石が転がっている道や石が剥き出しの所が多いので、後半になって集中力が切れやすくなると滑って転倒するのに注意する。タイヤは前述の『シラク』等のオールラウンドのXC系タイヤで十分。雨が降る前から水たまりが多いので、前後泥よけの装備があると走る事に集中できるので便利。チェーンには粘着性の高いオイルを塗っておく。

補給:今回は雨の中の気温の低いレースのため疲労は少なかった。食料や水が足りない 事は無かったが、普段どれだけ走って消耗するか把握する事が大切。水はこまめに取る事が大切だがガブ飲みしないように調整する。持っていないので使用しなかったが背中に背負えるキャメルバックが便利そうだった。水は無くなったら沢で汲むので生水に慣れておくようにする。重たいが走行中でも補給できるゼリー系の物をレーサージャージの背中のポケットに入れておくと便利。補給食ばかりだと飽きるのでおにぎり等があるとおいしく食べれる。

ペース:基本的に自分のペース以上では走らない。スタート直後は周りのペースは速いが自分の一定のペースを守る。休憩はチェックポイントでとるようにしてなるべくコース上では止まらなかった。何回も休憩すると足に乳酸が溜まって回らなくなるのだ。ここら辺は日頃自転車に乗っているかどうかなのだが…。あとは周りで話しやすそうな人と喋りながら走ると気が安らぐ。

初めて参加する場合:とにかく何度か近所の山を走るか、MTBのエンデューロレースでダート走行の経験を積む。山の下りは道の目を読み違うとすぐに転倒して大怪我してしまいます。あと100k実際走れる体力も大事だが、その間でマシントラブルに対処する知識を身に付ける事。パンクは当たり前だがディレーラーの調整ぐらいは自分でしないと。100kと聞くと走ってみたいと興味が湧きますが、きちんと能力を身に付けてから完走を目指しましょう。