セルフ セルフディスカバリー
クロスマウンテンバイク参戦記
加藤 亘

元気でチューリング隊(GDT隊)アドベンチャーレースでびゅー
「セルフディスカバリーアドベンチャーin王滝」参戦レポート


GDT隊堂々の総合8位をゲット!!(男子クラス4位 )の快進撃!! シドニー五輪トライアスロン女子代表O内はるなチーム、アトランタ五輪MTB女子XC代表K林加奈子チームを撃破!! 第1ステージ、サロモンアドベンチャー3位の国内最強S戸太郎プロチームに勝ちステージ3位 の快挙!! 第4ステージ、優勝チームと同タイムのステージ2位の大健闘!!

ついに行って参りました。「セルフディスカバリーアドベンチャーレース」 場所は7月のMTB100kmレースが行なわれた長野県の木曽山中の秘境王滝村。今シーズンGDT隊の最大のイベントとして挑戦した初のアドベンチャーレース体験であります。 この大会に備え、7月の100kmを完走し、夏の過酷なチューリングにも耐え、前週には強化練習として奥 武蔵の山で、実戦訓練??もこなし、準備万端??で臨んだのであった。
参加隊員は、最近サバゲ(サバイバルゲームの略:野山での戦争ごっこ遊び)にはまっているS山軍曹、乗鞍5位 で来シーズンはフルマラソンでサブスリー!!を狙うT梨学長、それに私P王子を加えた3名のGDT隊最強の特殊部隊を投入し上位 完走をめざした。
このレースは3名でのチーム戦であり、3人のチームワークが勝利の鍵となる。日頃足の引っ張り合いを している隊員同志の仲間割れだけが唯一の心配事であります。 さて、いかなる試練も乗り越えてきたGDT隊の運命やいかに!! いったいどうなってしまうのか!?  百戦錬磨のプロチームを相手にどんな戦いを挑むのか!? 乞うご期待。

■レース前日:9/22
朝6:00、P王子車は途中学長を拾い、中央道で塩尻ICをめざし出発。3連休だけあって中央道は朝っぱらから予想どおりの大渋滞。しかし笹子トンネル手前から走り出し、あとは順調。快調に飛ばして、塩尻 ICを下り、塩尻市内のスーパーで買出しを済ませる。長岡から一人現地に直行する予定となっていたS山軍曹に電話すると、もうすでに木曽福島にいるというではないか。現地王滝村に13時に到着すると、S山軍曹の車も先に到着しており、軍服??姿で我々の到着を待っていたのであった。天気の方は素晴らしい秋晴れで、雲ひとつなく、霊峰御嶽山がくっきりとその雄姿を見せていた。さすがGDT隊、日頃の行いがよろしいようで天も味方してくださるわい。
暑くも寒くもなく穏やかな秋の風が心地良い。王滝村にはついこないだ来たような感じで懐かしい景色にほっとする。 会場となる王滝村滝越の集落にある水交園は、前回のMTBレースの会場となった松原運動公園からさらに山に10km程入ったところにある。
まさに山に囲まれた秘境のなかのひっそりとした所である。
受付する前に、今晩のネグラとするベースキャンプ設営のため、会場近くの「森きちオートキャンプ場」 へ向かった。キャンプ場は木立の中のなかなか良い雰囲気の所であったが、管理人のオヤジに聞くと予約のない人はもう一杯だからキャンプサイト外の空地を探して適当にテントを張ってよろしいと半額料金にまけてくれた。こんなド辺鄙なところへ来るのはアドベンチャー関係者くらいかと思っていたが、さすがに3連休とあって他府県ナンバーの車で一般 の家族連れも結構来ていたのであった。
場内道路の脇にわずかな空地を見つけ、我々のベースキャンプを設営した。
テント設営を終了するともうやることがなく、レース受付会場へと向かった。


会場で受付を済ませ、レースパンフレットを受け取り、イワナの塩焼きとビールをいただきながらなが めてチェックすると、今回のレースには国内のこの手のアドベンチャーレースとしては最高の63チーム がエントリーしておった。
まあなんと物好きな連中が他にもたくさんおるわいと感心する。 サロモンアドベンチャー3位 のプロトライアスリートS戸太郎選手率いるEAST WINDチームを筆頭にサロモンのスポンサードを受けたもうひとつのEAST WIND ECO CHALLENGEチームという優勝候補の混合2チームが参戦。さらにW杯MTB女子XC出場のK林加奈子選手、同じくW杯MTB男子XC出場のXCエリートN田和弥選手らを擁するA&FアドベンチャーBRIKOチームが3チーム出場。ほかにシドニー五輪女子トライアスロン代表O内はるな率いる女子チームなど豪華な顔ぶれが並ぶ。またこの夏、隊長とチベットツーリングに行ったI田氏もとれとれ仲間のチームで出場していた。オッティモ柏のS井店長率いるトライアスリートチームも参戦しており、我々も負けるわけにはいかない。出場チームをみると、みなこの世界では顔見知りの連中らしく、シロウトはGDT隊くらいなもので、
思わずビビッてしまったのはいうまでもない。
しかしながらMTBでは数々の過酷な経験を積んだGDT隊のこと、見せ場は心得ております。
会場にはOD-BOXも出店を出しており、学長とS山軍曹はそこで明日のレースに備え、アドベンチャーレース用のシューズを格安で購入。あまりの安さにその製品の性能に疑問が残ったが、安さに負けてしまったようである。
おかげでレースではとんでもないことになろうとは・・・・。


18:00から前夜祭があり、食事とビールがタダで提供されるとあって、飢えたGDT隊はすかさず会場に乗り込み料理の並んだ席をゲットしたのであった。主催者側から今回のレースのコース説明と注意事項の説明を受ける。
第1ステージはMTB、第2ステージはリバートレック(沢登り)&ラン、第3ステージはトレイルラン、第4ステージは再びMTB、最終第5ステージはリバートレック&ランで総距離約80km/制限時間12時間の過酷なレースである。
渡されたコース図を見ると、MTBコースは前回の100kmレースで走った所がメインであった。これならGDT隊も勝手知ったる道である。勝負は第1ステージ、第3ステージのMTBとみた。不安なのは第2、第5の沢登りであった。こればかりは何しろ経験がなく、どんなコースかもわからない。とにかくぶっつけ本番の挑戦である。ランに不安があるS山軍曹のため、GDT隊得意のMTBステージでアドバンテージを握る作戦を取ることに決定した。
今回のレースでは3人が一緒にゴールしなければ次のステージには進めないのであった。スタートも3人 一緒で、途中一人でも脱落すれば失格である。それだけにいかにチームワークを発揮するかがポイントである。またレース中は自分の荷物はすべて自分で運ばなければならないのであった。特にMTBのステージでは、沢登りで使うウェットスーツからランシューズに補給食、バイク工具にスペアチューブ等、すべてをバックパックに入れて背負って走らなければならないので大変である。他の人間のサポートは受けられないのである。
ああ辛い。頼れるものは自分自身とチーム員のみ。これぞアドベンチャーレースというもの。

夜になるとさすがに標高1000mの山奥だけあってかなり冷え込む。ありったけの服を着込んでも寒い。 しかし、夜空は満天の星が降るように輝いていて見事。明日の天気も良さそうだ。早朝6:00スタートの明日のレースに備え、8:00には就寝したのであった。


■レース当日:9/23
翌朝は4:00に起床。早々に食事を済ませ、レース準備に取り掛かる。
各自ヘルメットには守護神ピカチュウ大王様を装着し準備OK。
5:00過ぎにはMTBでスタート会場に向かい、最終チェックを受ける。既に会場には多くの選手が集結しておる。
早朝の気温は10℃でまだ寒い、天気は快晴。絶好のレース日和である。
スタート地点に61チーム183名の選手が並び、カウントダウンが始まる。
6:00に号砲一発いよいよレースがスタートした。


■第1ステージ:MTB/14.1km
スタートしてしばらくは、先導車が付き集団を引っ張る。舗装路が途切れ、林道に入りダートとなった所で先導車がいなくなり本当のスタートとなる。最初は密集した集団で登るが、いろんな選手がいて走りにくい。中でも強豪チームのEAST WINDなどはチーム内の遅い選手を引っ張る牽引用のロープ付パイプをMTBの後ろに付けているものだから、危なくてしょーがない。集団先頭のペースが遅く渋滞してしま い団子状態で登るが、そこでシビレを切らした学長がついに最初のアタックをかます!! いきなり先頭に出てハイペースで集団をバラしにかかる作戦に出た。それと同時にS山軍曹も学長の後について集団の先頭に!! 自分はまだ心拍が上がらず、マイペースを余儀なくされ、集団の中程で様子を見ることにした。学長の絶妙のアタックにより、集団は粉砕されバラバラに。GDT隊の陽動作戦に引っかかった連中は、それに釣られてハイペースで追っかけ自滅するのみ。S山軍曹も一緒に付いて行ってしまったのは誤算であったが、どうもスタート前にアップしていたためか調子が良さそうであったので見送ることにした。


学長のハイペースに付いていけるのはトップチームの連中だけとなり、前にはもう10名程しかいない。プロのS戸太郎選手のチームも女子選手が遅れ出し、S戸選手が例の牽引ロープで引っ張り作戦に出ていた。
「 ズルイやんか!! そんなんありか!!」さすがに敵は場慣れしているとみえて姑息な手段を用意して使ってきよるわい。
自分はマイペースを維持して登っていると、前で仕事を終えた学長が待っており、プロチームを見習い学長の「ゴッドハンド後押し作戦」を開始する。ガレ場の登りでよくもまあ走りながら片手で押しができるものかと感心するが、さすがに押してもらうとペースが上がり楽チンである。激坂で喘ぐS戸選手達を追い抜き、一気にペースアップ。
「S戸さん、いつもスカパーの解説楽しみにして見てます。」と挨拶すると、
「ありがとう。9/28からヴェルタもやるからよろしく。」と、しっかり番組の宣伝をしておった。
「かならず見ます。」と答えてからアタックをかけ振りちぎった。
さらに自滅して前から落ちてくる選手達を次々に抜いて先頭を追う。S山軍曹は調子よく行ってしまった ようで後ろ姿が見えない。
最初からあんなに飛ばして大丈夫か?と不安になる。徐々に調子が出てきた自分は、途中から学長の押しの手を借りることもなくペースを上げ、S山軍曹を追う。 コースは途中から前回100kmコースの第1ステージと同じ道をたどる。一度走ったことのある道ならば勝負どころはわかっておるのだ。標高差300mあまりを登りきったところがピークとなる。コース中盤の頂上付近でついにS山軍曹の背中を捕らえ、やっと追いつく。下りに入り、ようやくGDT隊3名が揃った。こうなればもうあとはこっちのもの!? 学長の霍乱作戦は見事に成功し、あとは下りをぶっ飛ばすのみ。
コースの中間チェックポイントに辿り着き、チェック表を係員に手渡し、順位 を確認すると、なんと3位だというではないか!! 
これは予想外の展開。これほど作戦がうまくゆくとは!! こうなったらもう頑張るしかないやんか。
下りになるとS山軍曹のブチ切れた超高速ダウンヒルが炸裂し、かっ飛ばすとみるみるうちに自分達を引き離し、視界から消え去っていったのであった。我々はそのまま後ろのチームを引き離し、トランジットポイントである王滝ダムに到着した。


スタートして1時間1分、7:01に総合3位(男子クラス2位 )でゴール!! 見事に得意のMTBステージで、S戸選手達のサロモンプロチームを撃沈いたしました。パチパチパチ。スバラシイ結果 であります。
最初のステージとしてはできすぎの結果に戸惑いながらも気を良くした我々は、次のステージの準備に取り掛かった。
次のステージのスタートまでは最低15分の休憩時間が課せられる。その15分の間に着替えや補給食をとるなどして準備を済ませなければならないのだ。ゴールしたチーム順にゴールタイムから15分後に次のステージのスタートとなる。
お次はいよいよ不安なリバートレックだ。慣れないウェットスーツを着込み冷たい渓流の水に備える。
靴はランシューズを兼用して履いた。
補給食はもちろん!?元気の出るピカチュウマーク入りの「ポケモン蒸しパン」で決まりだ。
リバートレックとランに必要のない装備を残し、荷物を軽量化して次のステージに臨んだ。
次にとんでもなく辛いステージが待っているのも知らず・・・。


■第2ステージ:リバートレック&トレイルラン/約5km
7:16に3番手のチームとして王滝ダムをスタート。いきなり激坂の登りである。ウェットスーツを 着てのランは勝手が違い走りづらくしんどい。登りを終えると今度はかつての森林鉄道の廃線跡をたどるルートとなり、今度は真っ暗なトンネル越えとなった。トンネル途中で曲がっているために先が見えず真っ暗闇じゃーござんせんか。あわててヘッドライトを取り出し中を照らす。足元も石ころだらけで走りづらく、歩いてゆっくりと恐る恐る先へ進む。後ろから「前に誰かいるー!!」と声がして、サロモンチームが追って来ているのがわかった。ようやくトンネルを抜け、平坦なダム湖脇の廃線跡の道を走り出すと、すぐにうしろからS戸選手のいるサロモンチームが我々を追い抜いていった。なんと奴らはランでも遅い女子選手をロープで引っ張りながら走っていたのには驚いた。
「ええなあ、ワテらも引っ張ってほしいなあ。」と言うと、
S戸選手は、
「3万円です」とお答えになられたのであった。やはりランではさすがに奴らは速かった。
あっという間に差を広げられてしまった。ランではやはりS山軍曹が遅れ出した。少しペースを落とし合わせて走ることにする。
2kmくらいその廃線跡のルートを走ると鉄橋があり、それを渡ってから下の川に下り、渓流沿いに辿るコースとなった。鉄橋の上の枕木には朝の冷え込みで霜が降りて真っ白になっており、注意しないとツルツル滑る。鉄橋脇の崖から渓流に下り、いよいよここからがリバートレック初体験となる。本格的な沢登りとは違い、ロープセクションなどはなく緩やかな渓流に沿って上流に遡るルートである。見た目は楽な様だが、見るのと実際やるのとでは大違い。川遊びの延長と考えては甘ーいのであった。
いきなり川を渡る場面となり、最初の一歩を渓流の流れの中に踏み込んで思わず飛び上がった。
「うひゃー、ちっチベタイー!! こりゃたまらんばい。」と水の冷たさに震え上がった。
しかし泣き言を言っている場合ではないので、諦めて思い切ってドボンと川の中に腰まで浸かり沢を渡った。ウェットスーツのおかげで脚はそうでもないが、靴の中の足先は凍るように冷たい。しかし、一歩入ってしめばもうあとは一緒。冷たい感覚も次第に麻痺してきて、もうどうでもよくなった。沢の石にはコケがこびり付きツルツル滑りまくる。水の中の石にも藻がくっ付いているためツンツルリンの状態で脚を置くたびに滑ってフラフラしてうまく歩けない。そうして悪戦苦闘しているGDT隊の脇を後ろからきたチームの選手がヒョイヒョイと足を運んで抜いていく。女子選手までがそんな感じで容易く小走りで行くのであった。なんでか知らんが奴らときたら、滑りやすい石の上をいとも簡単に進んでいくものだから我々もマネして行こうとすると、途端に滑って冷たい川のなかに思いっきりダイブするハメになってしまったのであった。なんでやねん。 S山軍曹も昨日買ったアドベンチャーレース用のシューズが役立たずで怒っている。
沢の深さは、深い所で胸くらいだからなんとか渡ることができるのだが、水の中は流れが速くよく見えないので、うっかりすると深みにはまりドボンするのだった。全身ずぶ濡れ状態のトホホな姿で、遠ざかっていく選手達を恨めしく眺めながらがっくりと肩を落とすGDT隊であった。焦れば焦るほど足は滑り、後ろにひっくり返るは、石でくるぶしをヒットするはでてんてこ舞いやがね。足先は凍るように冷たいし、打ち身で痛く血は滲むし、ジャージも濡れて最悪の気分。
「ちくしょー、こうなったら慎重に事を進めるしかない。沢登りでこんなに苦労するとは・・・。」
中間のチェックポイントにようやく辿り着くが、まだまだ先は長そうだった。だいたい川では距離感が掴めないので、いったい自分がどれくらい進んだのかもわからない。「マジきついやんか。」と泣きがはいる。 軍曹と自分は、滑る足元に苦労しながらソロリソロリと歩を進める。学長はといえば、どうやらコツを掴んだらしく、どんどん進んでいってしまったのである。
さすが学長は呑込みが早い。そうしているうちにも次から次へと後ろのチームに抜かれまくり、どんどん順位 を下げる。結局5チームに抜かれ、我々は総合8位に後退。MTBでせっかく稼いだアドバンテージもシオシオのパーでんがな。
こうして沢を遡ること約3kmで苦労の末、やっとこさステージゴールのトランジットポイントの橋に到達。

8:37に1時間21分かかってようやくゴール。身も心もクタクタであった。しかし休む間もなく次の ステージが待っている。
ウェットスーツを脱いでバックパックに入れ、次のトレイルランの準備に早速取 り掛かる。
しかしランシューズはびしょびしょのままで気持わりー。日なたの暖かいところで休み、次の出番を待つ。


■第3ステージ:トレイルラン/約8km
8:52に3人一緒にランをスタートする。
最初のうちは緩いダートの林道の登りで、コースは前回の100kmコースの前半の一部と同じルートを使う。100m位 の標高差を登ってしまえば、あとは下りと平坦のみの比較的楽なコースで安心した。林道の登りでまず学長が先行。少し遅れて自分。S山軍曹はやはりランはきつそうで登りで遅れ気味。しばらくして同時スタートのチームに抜かれる。下りに入って学長は、そのチームについてペースを上げたが、自分はS山軍曹を気にしながらペースを落とした。しかし、長い下りの間に学長は先行して離れ、S山軍曹も遅れて自分の視界の前後からから消えてしまったのだった。
「いかん。チームワークが大切なのに3人がバラバラではどうしようもないわ。」
下り終わって、中間チェックポイントで先行していた学長が先に待っていた。1分遅れで自分が到着。
その後S山軍曹は5分遅れでようやく到着。3人やっと揃ったところで再びスタート。前のチームとは7分差で、現在総合9位 。
しばらくは平坦な道をS山軍曹のペースに合わせて3人並んで走ることにした。
そうしているうちに後ろのチームに追いつかれ抜かされる。悔しいがペースを上げられず見送るのみ。
ここでサロモンチームを見習って遅れがちなS山軍曹を後押しする作戦に出た。
学長のゴッドハンドがまたしても登場。
軍曹の背中を押して走る。これで少しペースが上がったが、逆に軍曹は走りにくそうでしんどそう。


三浦貯水池のほとりに出て、ダム湖に沿って森林鉄道の廃線跡ルートを辿るコースとなるともう道はほぼ 平坦である。
ここはかつて「ねこばば隊」が5月のツーリングで通ったところらしかった。しばらくするとまた別 のチームが仲良く追い抜いていった。コースは楽なのについていくことができず歯がゆい。
「くっそー!! 見ておれよ。次のMTBステージで挽回したるわい。」と歯軋りしながら見送る。
そう言っているうちにもあとからあとから後ろのチームに抜かれまくり、徐々に順位 を落とす。
すぐそこ に三浦ダムが見え始め、もうすぐゴールか?と安心したのであったが、ダム湖は大きく回りこんでおり、ま たどんどんダムから遠ざかっていくではないか!!
「なんや。すぐそこに見えとったのに、まだまだ先かいな。トホホ。」 ますますペースが落ち、S山軍曹には苦しい展開である。
足も上がらず蹴躓き、トロトロとした行軍が続きまたしても後ろに抜かれ、ついに総合11位 まで順位を落とす。
「この借りはすべて次のステージで返しちゃるさかい、首を洗って待っとれよ!!」と、抜いていった奴らにメラメラと闘志を燃やすGDT隊員達であった。 また中が真っ暗な廃線跡のトンネルがあり、おまけにここは足元に水がたまり、真ん中あたりで天井も落 盤している。
深い水溜りの中に足をとられながら進み、クリアする。しばらく走ると、ようやくさっきのステージの前半の橋のたもとまで辿り着き、あと3km程。来た道を戻り真っ暗なトンネルをくぐるともうゴールは目の前。
激坂を下り、三浦ダムのトランジットポイントに10:17に到着した。お次はいよいよ勝負のステージ。得意のMTBで挽回あるのみ。
コースは前に走った勝手知ったる道。アタックポイントも心得ております。補給食を十分に摂り、決戦に備える。


■第4ステージ:MTB/22.8km
10:32 MTBに乗り、荷物をすべて背負いダムをスタートした。自分はボトルの水を入れ忘れ、学長、軍曹から少し遅れてスタートを切る。最初の激坂を登ったところで、ランでトンネルから出てきたO内はるな選手の女子チームに出くわす。
彼女達は我々のメットを見て
「うわー、ピカチュウかわいいですね。」とお褒めのお言葉をのたまう。
オリンピック選手にピカチュウがウケて声を掛けられ心も浮つく。
にやけた顔で「どうもー。頑張りマース。」と応える。
三浦ダムの上を渡るとすぐに荒れたダートの激坂林道となり、急に息が上がる。
先行する学長達を追って ペースを上げようともがくが、はじめのうちは調子が上がらず苦戦する。しばらく登り続けると、学長が 待っており、ここから例のゴッドハンド作戦を開始する。ケツを押されてやっとペースが上がり、S山軍曹に追いついた。
さてここからいよいよ反撃開始の狼煙を上げる。


先日の100kmの第2CP地点を通過し、同じルートを辿ると、先日の悪夢が蘇えってきた。
しかし、今回はちとワケがちがーう。ここからが勝負なのであーる。おまけに今日はこの間の真夏とは違い暑くなーい。
最初の尾根を越えた所で、まず5分前にスタートした前のチームの姿を発見。奴らかなりペースが遅いと見た。
女子選手が足を引っ張りペースが上がらないようであった。獲物を射程距離に捉え、こちらのペー スは一気に上がった。
あっという間に追いつき蹴散らして追い抜く。まずは1ポイント挽回。 少し下りがあり、次のピークまでは長い登りが続く。
登りが長いほどGDT隊には有利であーる。3つ目の尾根を越えると、また次の獲物を前方に発見!! 射程に入れてロックオン。
今度は男子チームだが、バイクは苦手のようであった。程なくして3匹まとめて後方に置き去りにする。これで2ポイント挽回。
途中標高1700mを越えるコース最高地点の尾根を越えると、目の前に雄大な御嶽山の姿が真正面 に見え感動する。この素晴らしい景観にこそアドベンチャーレースの醍醐味がある。前回は、疲れすぎて廻りの景 色を見る余裕もなく、雲も出ていたため、今回のように景色を堪能することはできなかったが、今回は余 裕があり楽しめた。天気も雲ひとつない秋晴れで山の上は涼しいくらいでちょうど走りやすかった。 登りでは今度はS山軍曹が学長のゴッドハンドの手助けを借りペースを上げる。自分も遅れず付いていく。 最後の登りにはいったところで、
向こうの尾根に3つ目の獲物を発見。距離は遠かったが追いつけない距離ではない。
ペースを上げ徐々に差を詰め、射程距離に導く。今度の相手は15分前にスタートしていたW杯MTB参戦経験もあるN田和弥選手率いるA&Fチームで強敵である。しかし一人女子選手がいるためそれほど登りのペースは速くない。登りの頂上の尾根にある中間チェックポイントでついに前を捉えた。先にスタートされ逃げられたが、すぐさま先頭で下るS山軍曹が得意のDHでぶっ飛ばし追いつき抜きにかかった。
敵はそれに釣られてS山軍曹の超ハイペースな下りについていき、一緒になって下っていた女子選手がそのままガレ場に突入し、大転倒!! 我々の直前でこけた女子選手を避け、「だいじょーぶすかー?」と声を掛けながらも不敵な笑みをこぼして抜き去った。
これでさっきのランの借りはすべて返したのであった。再び8位に浮上し、なおも後続に差を広げるべく下りをぶっ飛ばす。


今回は前回の教訓を生かし、タイヤ空気圧を高め(4気圧)にセットし、パンクに備えたため下りでも安心して飛ばせたのであった。後続のチームを遥か後方に置き去りにして前のチームを追うが、前とは差が大きく、まったく見えない状態であった。先行するS山軍曹の姿も見えなくなり、必死で追うがとてもじゃないが追いつかない。ランで不調だったS山軍曹であったが、ここで一気に本領発揮。さすがに得意のMTBの下りで見せ場を作り、先程のランでの汚名を挽回し、いい仕事をしてくれた。
ダートの林道が終わると舗装の良い道が現れ、アウタートップで踏み倒し全開スピードで下る。ほどなくして我々がベースキャンプを敷いているキャンプ場の脇を通 り過ぎ、そのままゴールの水交園前に走り込んだ。既に先にゴールしていたS山軍曹と一緒に12:04に8位 でチェックポイントでカードを手渡した。なんと区間タイムは、1:47でステージ2位 !! 優勝したサロモンチームと同タイム!!結局バイクパートをノントラブルで乗り切り、ランでの遅れを取り戻して、予告どおりに順位 も挽回したGDT隊は、バイクを置いて最後のステージに備える。 残すは苦手なリバートレックのみ。なんとかこのまま最後まで逃げ切りたいところだが不安が残る。重い バックパックなど荷物はすべて置いていくことにした。最後のステージは6km程だから補給食も何も持たずに空身で走ることにした。
喉が渇けば川の水を飲めば済むこと、ボトルもいらないと割り切った。
ウェットスーツを着込みスタートを待っていると、トップのサロモンチームが最後のステージを終えゴールしてきた。
速い!!我々とは約1時間の差である。しかし、2位のチームがゴールする前に我々のスタート時間となった。
ここまで約6時間であったが、足切時間の10時間には遥かに及ばないハイペースの走りでまだまだ余裕をかます。
この時点で制限時間の10時間をオーバーすると次の最終ステージに進めないのであった。


■第5ステージ:リバートレック&トレイルラン/約6km
12:19いよいよ最後のステージがスタート。
水交園を出発し、「白川」を遡るコースで上流約3kmの地点で折り返し、さっきバイクで下ってきた舗装 路をランで戻る比較的楽なコース設定のようで安心した。MTBで抜いた後ろのチームとの差は約5分。さて、このまま最後まで逃げ切れるかどうか? 
最後の戦いが始まる。 第2ステージで苦労した記憶が蘇えり、少々ナーバスになって走り出した。最初はまず、川沿いの林道を 走る。
すぐに比較的広い河原に出て、大きな石がゴロゴロするなかを進む。第2ステージの渓流とは違い、この川巾は広く歩きやすい。
石も滑らず、川の中の石にもコケがなく滑りにくいので安心した。水は透き 通 っており、そのまますくって飲めるほどきれいである。
おまけに朝のように寒くなく、水もちょうどい い感じの冷たさでありがたい。 しばらく進むと橋があり、その脇から土手の上の平らな道を行く。実はここは、我々のベースキャンプの すぐ横で、昨日のうちに十分下見をしておいたのだった。
河原を行くよりも土手上を行ったほうが当然有 利と判断し、そのまま走る。ルールでは、別 に川の中を行かなければならないとは書いていないので、そ の辺の判断は選手の作戦のうちなのであった。しばらくは川に沿った林の中の道を走り、河原に出る。
この作戦によりかなりタイムを稼げた。


ここから河原の中を進むことになったが、後ろを見ても後続のチームが追って来ている様子もなく、もう あわててもしようがないのでゆっくり行くことにした。こうなったらレースを楽しんだ方がおもしろいと 思い、ハイキング気分で歩く。S山軍曹もそんな感じで進む。
学長だけは要領よくスタスタと進み、自分より先にどんどん行ってしまう。
川の水はきれいで、喉が乾くたびに立ち止まり、両手ですくって飲み、頭からかぶった。
流れは速いがそれほど深い所もないので、安心して渡れる。何度も沢を渡ったり、大きな石を越えたりして徐々に上流に向かって進む。
依然前にも後ろにも別のチームの選手の姿は見えない。淡々と歩をかさねて進むこと約40分で、ようやく折り返し地点のチェックポイントに到達。川岸の崖をよじ登り、学長に合流しS山軍曹の到着を待つ。
すぐにS山軍曹も到着したが、なんといつの間にか後ろのチームの選手の一人が続いて来た。


「マジ!? これはヤバイ。もう追いつかれたか!?」とあわててスタート。しかしそのほかの選手の姿は見え ず、ひとまず安心。
だが油断は禁物、敵はもうすぐそばまで来ているらしかった。ランに入り、舗装路を下るが、ここでS山軍曹が遅れる。
後続を気にしながら先を急ぐ。自分と学長で二人で前を走っていると後ろから声がする。
「もう来たか!?」と振り返るとそれは第4ステージでMTBで下りてくるチームの選手達であった。
我々を見て「速いですねえ、もう終わりですか?」と抜いていった。やれやれ追いつかれたかと思ったのでよかった。
そのあと2チーム程のMTBの集団が抜いていったが、どうやらランで追ってくる選手の姿は見えないようだったのでひとまず安心。しかしS山軍曹がやや遅れているので気がかりだ。キャンプ場の所まで下ってくると残りは約1km。このまま逃げ切れそうな気配。
ゴールの横断幕が見える橋のたもとまでやって来て、S山軍曹を待つことにした。しばらくして軍曹が下ってくるのが見えた!!
しかし、その100m後方に敵チームの選手の姿が!!


「げっヤバイ。追いつかれる!! S山軍曹大ピーンチ。」だが選手の姿は2名だけでもう一人の女子選手がいない。
しめた!!敵はまだ遅れている。大丈夫だ。そしてS山軍曹がやっと合流し、ついに3人揃って最後の直線100mをゴールに向かってつっ走る!!ゴール地点では、事務局のアナウンサーが叫んでいる。
「やってきました!! ピカチュウチームです。総合8位 でゴールです。さあ最後はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか!?」 しかし、我々はそんな最後のオチまで計算してまへんがな。
写真撮るんなら先に言ってくれい!!気の利いたポーズも思いつかず、ただ3人横一列に並んで両手を上げてあっけなくゴール!!
タイムは13:13、スタートから7時間13分の長い戦いであった。


ついに最終ステージではどこにも抜かれることもなく逃げ切りに成功。総合8位 をキープしたのでありま した。
目標の夢の一ケタ順位を手に入れ、できすぎの結果に満足してレースを終えることができた。
惜しくもクラス3位以内の入賞は逃したが、初めてのレースにしては上出来であります。
来年はさらにランと沢登りを強化して上位を目指すとしよう???
ゴール後、健闘を称えあい??S戸太郎選手と握手をかわす。
さすがプロには逃げられたが、第1ステージではGDT隊の面 目を保つ戦いで、サロモンプロチームに一矢報いることができたのは大成功であった。
今回はMTBのコースが長くGDT隊には有利なコース設定であったが、来年の大会はさらに過酷なコー スが待ち受けているであろう。 ゴール後、豚汁をご馳走になり一休みしてから帰り支度をしているところに、ようやくMTBを終えて帰ってきたオッティモ柏チームに遭遇。チーム内にMTB初心者のメンバーがおり、このステージかなり苦労したようだ。無理もない、山も走ったことのない人間ではこのコースはとてつもなく厳しいものであーる。


18:00からの表彰式まではかなりの時間があったので、一度キャンプに引き上げて温泉に入りに行く ことにした。
目指す温泉は王滝村役場から御嶽山に登る道の途中に有り、滝越からは15km程の距離がある。3人でS山車に乗り込み、まだレースを続けている連中を尻目に風呂に向かった。
GDT隊としてはゴールはあくまでも温泉である。
お先に失礼して温泉に飛び込み、めでたくゴールと相成りました。風呂に入ってさっぱりした我々は、ベースキャンプに戻り、明るいうちに早めの夕食を食べた。飯を食い終わってから会場に戻り表彰式に出向いた。
残念ながら我々は入賞は逃したが、上位にいる連中はほとんどがサポートを受けているセミプロチームで あることを考えると大健闘といえるかも? 今回の結果に気を良くした隊員達は、このレベルに満足する ことなくさらに上をめざすことになるのはいうまでもない。
次の目標は、サロモンXアドベンチャー? レイドゴロワーズ?? それとも・・・・・・・・???


■翌日:9/24 第6ステージ(オプション!?)
翌日も朝からピーカンの素晴らしい天気であった。3連チャンで気持ち良い秋晴れに恵まれ、自転車日和?? であったので、今日はオプションとして第6ステージ(MTBヒルクライム)を行なうことにした。参加チームはGDT隊1チームのみ。
参加者は学長と自分の2名。S山軍曹は、足の筋肉痛のためリタイヤであった。
朝7:00キャンプ場をスタートし、御嶽山6合目をめざす。滝越の標高は約1000m、そこから王滝村役場までは約13kmの道程。
標高900mの王滝村役場前を7:30通過、そこからが本格的なヒルクライムとなる。標高2100mの6合目駐車場までは、21kmで1200mの登りとなり、ほぼ乗鞍と同じくらいの超級の頂上ゴールのコースである。 序盤は学長と二人同じペースでゆっくり登る。
1/3を過ぎたあたりから調子が出てきて、自分は先行してペースを上げると学長と差が開き、そのまま逃げることにする。
なぜか滅法調子が良く、昨日の疲れを感 じないで絶好調であった。徐々に学長を引き離し独走態勢にはいる。半分くらいいったところで前方にロードで前後にサイドバックを付けたツーリング仕様で登るアンちゃんを発見。すぐに追いつき抜かしたが、 かなり苦しそう。スキー場のゲレンデを横切るつづら折れのところで後ろを確認するが、学長の姿が見え ない。
ちょうどそのころ学長は、膝痛とハンガーノックで休憩して補給食を摂っていたらしかった。
自分 はそのまま走って頂上をめざし、9:15に頂上の駐車場にゴール。3分程遅れて学長もゴールした。


眼前の御嶽山頂上の素晴らしい景色を眺めながら寛ぎ、しばらく一休みする。
すると、MTBを積んだ車で登ってくる集団があり、我々の姿をジロジロ見ておる。
誰かと思ったら、隊長とチベット行きをしたI田氏や、O内はるな、H谷みさき姉妹らのチームの集団であった。
彼らは今日はここから御嶽山の頂上へ登山しに来たらしく車で上がってきたのであった。
MTBで登ってきた我々を見て「凄いですねえ」と、O内選手が声を掛けてきた。まもなく他の連中も集まり、10名ほどの集団で我々を取り囲み話をする。彼らはこれから第6ステージらしい。
「タイム計ってますから」と言うと笑いながら仲良く山頂めざして登っていったのであった。
レースの翌日に自転車で登ってくる我々もヘンだが、登山をする奴らも相当イカレている。(同じか??)
前回レースの前日に登山したGDT隊というのもかなりアホであーる。 上で一休みしたあと、下りをぶっ飛ばす。途中のスキー場を横切るところでは、つづら折れの道を行かずにそのまま草のゲレンデをまっすぐに突っ切るDH作戦に出た。これぞMTBならではの下り方。ロードではこうはいかない。せっかくMTBで来ているのだから、下りも楽しまなくてはならないのはいうまでもない。
ショートカットして直滑降なのである。そうして下まで下り、あとは来た道を滝越のキャンプ場まで戻る。
キャンプ場には10:40到着で、第6ステージを3時間40分で無事終了したのであった。
(走行距離:68.2km/累計標高差:1300m/AV:19.8km/h)
ベースキャンプではS山軍曹がのんびり待っており、我々の到着を待って撤収を始めた。
11時過ぎにはテントの撤収を終え、王滝村に別れを告げ家路に向かったのでありました。 おしまい。
(レポート:元気でチューリング隊 加藤 亘)


参加61チーム/完走56チーム
1位 EAST WIND ECO CHALLENGE (谷口けい・佐藤佳幸・田中正人) 6:15 混合1位
2位 EAST WIND (白戸太郎・石川弘樹・桜井美恵) 6:26 混合2位
3位 The Earth Players Transcend Experts (大内直樹・久保哲彦・稲垣勇一郎) 6:34 男子1位
4位 チームDON亀 (伊勢村伸介・泉田秀利・梅田隆弘) 6:35 男子2位
5位 PC松本サイクルクラブ松本Aチーム (中野善人・前田芳久・松本晴美)  6:37 混合3位
6位 牛込自転車倶楽部 (塚田聖次・杉山真之・石川陽三) 6:39 男子3位
7位 もしカメQちゃん (大木通照・小関訓・加藤久代)  6:48 混合4位
8位 元気でチューリング隊 (加藤亘・杉山隆・高梨真幸人) 7:13 男子4位
                        (1ST:3位 /2ST:12位/3ST:19位/4ST:2位/5ST:13位)
9位 伊那アスリート (宮沢利幸・樋代俊彦・飯島浩) 7:14 男子5位
10位 A&FアドベンチャーBRIKO-Bチーム (小林昌樹・西田和弥・桐竹由花)  7:17 混合5位