セルフディスカバリーアドベンチャー
スノーフィールドチャレンジ・イン・白馬 レポート
「男子部門優勝Team CWX Elite 松葉桂二選手のレポート」

 なんで50才の中年サラリーマン自転車乗りが、勝ってしまったの? 他の参加者のみならず、当の本人が一番驚いている「スノーフィールド・チャレンジ・イン・白馬」。ここでは、SDA (Self Discovery Adventure)シリーズ冬季版の傾向と対策について、後から木登り的にVTRしてみたい。(Team CWX Elite 松葉 桂二)

【第1種目MTB 10km】
当初5km×3周回=15kmで予定されていたが、雪質コンディションを考慮して10kmに変更となった。最も得意なMTB種目でタイムを稼ぐためには、距離が長いことを望んでいたが、実走してみると雪中ライドはそんなに甘くないことが直ぐに理解できた。朝一番、辺りを試走してみると前夜降った10cmほどの新雪は、ピステ圧雪したにもかかわらず、サラサラと柔らかくタイヤを深く潜り込ませ、バイク挙動が落ち着かない。少しでも速く走れないかと、アレコレ出走ギリギリまでギャンブル気味のセッティングを試み、MTBスタート位置フロントローに着いた。

AM8時、滝川さんのホーンでスタートが切られ走り出してみると、誰も追ってこないのが不思議だった。ダウンヒルセクションは、ピステのキャタピラでフラットに踏み均され、ワダチも凹凸もない美しい雪面が広がっていて、かつて経験したことがないほどのスピードで下ることが出来る。一気にアウタートップまでギヤをシフトアップし、ペダリング加速していく。滑り落ちるような感じが、スキーのスーパーGSLで滑降している感覚に似ていて、「ヒェー」と、叫びたくなるほど爽快かつ新鮮だった。コースプロフィールは高低差50m程の上下を3回繰り返すと元に戻るコース設定になっている。下りはブレーキを殆ど必要とせず、適時リアのみでテールスライドさせ、ラインを突いて走ることができる。楽々だったが2周目に入ってみると、雪面の荒れ具合やタイヤ痕跡から、他の選手たちは苦しみながら走っていることが容易に判った。上りは押しのツボ足が続き、下りもクラッシュによる穴が至る所に空いていて乗車することの難しさを物語っていた。しかし自分のバイクは、トルク変動の少ないペダリングさえ心がければ、低圧タイヤはすこぶる快調であり、乗車率100%で先行することが出来た。途中、チューブレスタイヤの空気が抜けすぎてパンク状態となり、エアー追加したことと、ヘアピンで新雪に突っ込み落車して、ハンドルステムが狂ったものの、なんとかリカバリーしTopでトランジションへ帰ってくることができた。

【MTBの傾向と対策】
1)フロント & リアともにサスを柔らかく、戻りも遅くした。
2)タイヤ空気圧を乗車限界の1.2kgf/cm2程度まで落とした。
3)ふかふか雪の下りでフロント加重によるハンドリング低下を防ぐため、後ろ乗りし易くするためサドル位置を2cmさげた。空気圧を減らすと、転がりが悪くなるから燃費が低下し、お腹が早く減るかも知れない。しかし、雪上を乗るか、押すかを比べたら、乗った方が速いという判断から、タイヤ空気圧は、極低圧設定とした。しかしロードインデックス(タイヤにかかる重量を支える能力)は、タイヤ種類とライダー体重に左右されるため、一概に決められないことから、試走で最適圧を見つけだすことが、重要である。
4)使用バイク:2005 S-Works Epic FSR Disk ファーストトラックチューブレスS-Worksタイヤ2.0inc装着

【第2種目XC Ski 10km】
3年に1回しかやらないNordic Ski 。道具だけは一流品のスケーティング用をチームメンバーから借りて、前夜Racing Waxも塗ってもらったが、作戦的なものは何もない。あるのは根性と忍耐で滑る(歩く?)のみである。このパートは、1周5kmの3分の2まで急激に上っていて、ホントに苦しい。後半の落差100m近い下りが一時の慰めである。今期初滑りのXC Skiに喘ぎながらも、暫定Topで2周回に進むと国体級スキーヤーに次々と追いつかれ、アッと言う間に4人に抜かれ置いて行かれる。ここからは、モチベーション維持が大切だ。カーボンストックに身を預け、手の力だけで滑らせ脚を温存しながらトランジションを目指しなんとか10kmを終えると、苦しみから解放された喜びが沸いて来る。後は、5kmのスノーシューのみだ。

【XC Skiの傾向と対策】
1) 紛いなりにも、競技用XC Skiを使用した方が速いか?
2)スケーティングが出来ない人は、クラシカルで走る手もある。
3)トランジションは、第4の競技だ。

【第3種目Snow-shoe 5km】
トライアスロンでもシューズは、バイクとラン用の2足だけなのに、この白馬SDAはややこしい。バイクシューズ → XCスキー靴 → スノーシューと3足用意しなければならない。靴の履き替え競争でトランジションタイムを短縮するため、事前にセットしておいたTSL Step-in Snowshoes Racingを素早く履きコースに出る。この間に先行者を1人パスしたようだ。スノーシューのコースは、高低差70〜80mの山を2回上り下りする設定だが、走ることが出来るのは平地か下りだけである。上りは、ひたすら早足で歩くことしかできなかった。それでも前半の上りで1人、後半の上りで1人と抜いて進むと、いよいよゴールが見えてきた。新雪に残る先行者のトレースは、1人しか居ないようだった。XC Skiと比べたら、相対的に楽なSnow-shoe 5kmを終えてゴールゾーンに近づくと「ソロ1位です!」と声をかけられ、びっくり。先行していたのは、リレーカテゴリーのTeam CWXのみで、総合2位だった。

【Snow-shoeの傾向と対策】
1)TSL Step-in Snowshoes Racingは、トータルで軽く走りやすい優れモノである。
2)レーススタート2時間前までの食事とコンディショニングが大切。
3) 寒冷下で、高い保温力とスピーディーな蒸散効果を持つCWXサーモライトのウエアは、保温と冷却をうまくコントロールでき、レース最後まで快適で、パフォーマンス低下を防止してくれた。

長野冬季オリンピック・ノルディックスキー会場スノーハープを使ったMTB 10km、XC Ski10km、Snow-shoe 5kmを連続しておこなうSDAシリーズ第2戦白馬大会は、第1戦の王滝大会とは、また違った楽しさがあった。西洋カンジキとも言えるスノーシューやクロスカントリースキーの経験が少ないことから、不安半分、期待半分で出場したが、雪の中での複合競技は、素晴らしさに満ちていた。番狂わせなリザルトになったが、どのように条件が変化しても、必ず勝者は存在し、そこには結果に結びつく理由があるから面白い。
しかし、いくら楽しい時間を刻んだとしても、明日また仕事に就けば、昨日の出来事など幻想の彼方へ消え失せてしまうほど、忙しい現実が待っている。再び非現実の快楽を与えてくれるSDAへ還ってこられることを夢見、娑婆社会へ戻らなければならない・・・ ( 2005.3.13)

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