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レース参戦記
TEAM J-BEAT BOA[鈴木幹久、平山真弓、道向修] |
●チーム概要
■チーム名 : Team J−BEAT BOA ■メンバー : ◇ 道向 修 (blood Type : B) ◇ 平川 真弓 (blood Type : O) ◇ 鈴木 幹久 (blood Type : A) ■目標 : 混合チーム部門3位入賞! ●チーム結成&トレーニング略歴 ■1月28日 道向、鈴木アドベンチャーレース説明会出席(於:GW本社) ■2月08日 道向から鈴木へアドベンチャーレース出場のInvitation 鈴木即OKの回答 ■2月09日 道向から平川へアドベンチャーレース出場のInvitation ■2月10日 平川より出場OKの回答 ■2月16日 チーム名「Team J−BEAT BOA」決定 ■3月16日 レースエントリーフィー振込完了(実質レース出場決定) ■5月03日 第一回合同練習(マウンテンバイク =南山50km) ■5月04日 第二回合同練習(トレイルラン=多摩周辺30km) ■6月27日 第三回合同練習(カヤック=江ノ島 3時間) ■7月02日 第四回合同練習(沢登り=葛葉川本谷 4.5時間) ■7月17日 セルフディスカバリーアドベンチャーレースイン王滝村出場 |
■チーム結成
レースから遡ること約半年前の2005年1月28日。渋谷にあるゴールドウィン本社で行われた「アドベンチャーレース報告会」と題されたイベントに道向さんと鈴木が興味本位で参加。モロッコ、アメリカ、アルゼンチンで行われたアドベンチャーレースの最高峰、Raid Champonshipに参戦した日本代表のチーム、「サムライスピリッツ」の迫力あるレース映像等は、我々のアスリート魂に大きな刺激を与え、アドベンチャーレース出場へのトリガーとなった。 その後、まもなく道向さんからレース参戦への誘いがあり、報告会で配布された、今年のアドベンチャーレーススケジュールの中から今回の大会を選択。鈴木は即OKの返答をする。アドベンチャーレースの経験が少ないことから、上位を狙うためには男女混合の部がいいだろうと考え、チーム内で共に出場する女性を探したところ、運動能力の高そうな平川真弓さんで意見が一致。早々旦那様への了解も含めオファーした所、「非常に興味があり、是非出場したい。」との返答。所属チーム名とそれぞれの血液型をとって「Team J−Beat BOA」とし、本レースへ臨む3名の混合チームが結成された。 |
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■トレーニング&対策
アドベンチャーレースは、過去に道向さんが一度出場したのみだったため、昨年の同大会のリザルトやレポートなどから今年発表されている各ステージ種目を念入りに分析した。また、道向さんの友人であり、アドベンチャーレースの第一人者でもある佐藤佳之さんや、真弓さんの知人で同大会出場経験のある方からの情報は、レースまでのトレーニングやギア・補給食などを決める上で大変参考となった。 3人のメンバーは、それぞれトライアスロンレースや目標としている大会があることから、身体作りは各々とし、合同での練習は必要最小限にとどめることになった。 第一回目に行った合同練習は、5月3日。まずは、我々に一番馴染みがあると思われるマウンテンバイクの練習からスタートした。場所は東京都稲城市にある南山という細かいアップダウンのあるダートコース。やはりロードバイクとは感覚が違い、不整地の衝撃に対するハンドル操作やブレーキングへの対応が求められた。レース出場経験のある道向さんのアドバイスの下、レースを想定した急坂の繰り返し練習を含めた4時間ほどのトレーニングにより、ある程度MTBに対する感覚をつかむことができた。そして翌日にはアップダウンを含めたトレイルランを30km程度行い、ランステージへ備へトレーニングを行った。 6月27日。3回目の合同練習は、鈴木がまだ経験のないカヌーパートへの対応をするため、佐藤佳之さんからの紹介で、道向さんとともに江ノ島へと向かった。ここは、元カヌーオリンピック代表の遠藤恵子さんが指導する「バディ冒険団」という所で、サポートの女性(船乗りが職業)とともに、パドルの握り方から、沈没した時の対処方法まで、とても丁寧に教えていただくことができた。 合同トレーニングの締めくくりは、リバートレックパートに対応するための沢登りだった。レース2週間前の7月2日、3人で向かった場所は、「葛葉川本谷」という神奈川県秦野市(ヤビツ峠の近く)にある約4kmの沢登りコース。この経験は、実レースにおいて、大きく役に立つことになった。流れ落ちる水しぶきを浴びながら、最大で10mクラスの滝を登る行程は、ロッククライマーの気分を誘い、初心者コースとはいえ、時には命の危険さえ感じる場面がいくつもあり、スリルと楽しさを十分味わうことができた。 |
■開催地へ
レース前日の7月16日(土)、午前6:00前に自宅を出発。中央道から長野自動車道「塩尻IC」を経て国道19号(中仙道)を65kmほど進んだ所に今回行われるレースの舞台「長野県王滝村」がある。途中朝食などの買出しをするため、木曽福島の中心街へ向かう街道に入ると、昔の宿場町を想わせる旅籠など、風情ある町並がそのまま残されていた。そして圧巻はランチだった。道向さん夫妻が十数年前この地を訪れ、今でも忘れていなかったそば屋は、その名も「木曽街道くるまや」。木曽の山奥から流れる新鮮な水で作られた名産のそばと、ご当地産のとろろは最高に美味だった。国道から木曽川にかかる「元橋」を右折すると、道はしだいに狭く、山深さを増し、アドベンチャーレースの地に相応しい大自然を早くも感じることができた。 レースのメイン会場となる「松原スポーツ公園」という施設は、目前に迫る山々に挟まれた王滝川沿いにある広い敷地で、400mトラック、野球場などがあり、メーカーブースが並ぶ吹き抜けの屋根付ドームは今年新設されたばかりだという。 午後2時過ぎ。この日行われていたビギナーレースのトップチーム(実際は10分のペナルティーで3位)がゴールに入ってきた。初出場の我々は、ここでもどんな装備をしているのかチェック。さらにカヌーが行われている御岳湖に移動、レースの様子を見て午後3時過ぎに宿泊場所の民宿に到着。明日の装備や、補給食、レースウェアなど入念にチェックした。 午後6:00からのカーボパーティー&競技説明会は、松原スポーツ公園のドームで、ビギナーレースの表彰とアワードパーティーも兼ねて行われた。王滝村村長の挨拶や司会の話ぶりは、どこかアットホームな雰囲気で、トライアスロンレースとはまた違った心地よさを感じさせてくれた。そして、表彰台に立つビギナーレース上位者を前に、「明日は我々もここに立とう!」と誓い合い、会場を後にした。 |
■レース当日
午前4:00起床。標高800mにある王滝村の早朝は肌寒さを感じる。(道向さんはただ一人「暖かいね」と叫んでいたが。)民宿で用意してくれたおにぎりと、道向さん持参の液体燃料ストーブで作ったゆで卵などを朝食にした。 全ての荷物を車に積み、午前5:00に民宿を出発。まだ梅雨明け前の空はどんより雲っていた。10分ほど離れたスタート会場に到着すると、すでに多くの選手が準備をしており、早々に我々も最終レジストを終え、バイクや装備などの準備にとりかかった。 |
■第一ステージ : マウンテンバイク
スタート時間の午前6:00前。おそらく一番最後にスタート地点に3人が到着。第一ステージはマウンテンバイクで、途中まで先導車がつき、その車を追い抜くことができないため、我々はやや後方の位置からスタートした。3人が一緒ということもあり、トライアスロンレースほどの緊張はないが、互いに握手を交わすと気が引き締まっていった。 ホーンが鳴り、一斉にスタートを切ると、まずはオンロードを先導車の後にあとに緩やかな上り坂を進む。そして5kmほどの地点を左に曲がると砂利道のオフロードとともに正式に競技が開始された。 「ここから飛ばして行こう」と先頭を走る道向さんの指示が出るが、慣れない不整地と厳しい上りになかなかスピードが上がらない。2番手を走る真弓さんは、すでに息が上がり苦しい息使いが聞こえてくる。しかし、ここはまだプロローグに過ぎなかった。斜度はそれほど厳しくないものの、時折こぶし大の尖った岩があるガレ地を延々と登るコースがまっていた。出発して約1時間半が経過すると、やっと空が近くに感じられ、峠付近の眼下には山深い雄大な景色を見ることができた。しかし、油断はできなかった。下りのパートに入ると地面からの激しい衝撃が襲い、フロントサスペンションがほとんど利いていないような錯覚をうける。そして、やや急な下りのコーナーにさしかかった瞬間、ブレーキ操作を誤った真弓さんの後ろタイヤがロック。そのまま左側頭部から突っ込む形で落車してしまった。この衝撃でヘルメットが割れ打撲傷を負ったが、幸い競技は続けることができた。 ちょうど2時間が経過したところで、最初のチェックポイントがあった。説明会では聞きそびれたが、どうやら同じステージにも中間チェックポイントがあるらしい。ここでは、事前に渡されたカードに通過時間や次のスタート時間を記入していく。我々は、少しでも時間を短縮するため、記入を道向さんに託し先を急いだ。チェックポイントを過ぎ、再び延々と上りが続く峠越えが始まると、同じカテゴリーの混合チームが見え始め、下りで離され上りで追いつくという展開が続いた。事前アナウンスでは距離35kmとのことだったが、それ以上に長く感じられた厳しい第一ステージは、結局3時間30分を費やし終了した。 |
■第二ステージ : リバートレック
各ステージの間は、15分間のレストタイムが強要される。この間に補給を済ませ次のステージに向けた装備を整えることになる。このステージは約3kmの川を下る「リバートレック」と、同じコース沿いを戻ってくる「トレイルラン」が組み合わされた6kmのパートとなる。我々は、リュックに準備していた、渓流用のシューズと、ウエットスーツを装着しスタート合図を待った。第一ステージが非常にタフだったためか、15分間は予想以上に短く感じられた。スタートすると直ぐに幅10mほどの川が現れ、ここを下流に向かい進んでいくことになる。先頭を行く道向さんの判断で最短ルートを捜し、川の中と川岸の岩場を交互に繰り返していく。源流に近い川の水はどこまでも澄んでいて、数秒つかるだけで身体が冷えきるほど水温が低い。途中両サイドが岩でふさがれ、3mほど下の滝壺へダイブしなければならない箇所もあるなど、アドベンチャーレースの醍醐味を十分味わうことのできるステージだった。 |
■第三ステージ : マウンテンバイク
第二ステージが終わると、再び第一ステージで通ってきたコースを途中ショートカットして戻る、2度目のマウンテンバイクステージとなる。2つのステージを終えスタートからすでに5時間が経過しようとしている。スタートして直ぐの上りでは、すでに脚に乳酸が溜まり、なかなかスピードが上がらない。長い上りを終え、一旦下ると2つめの峠越えがすぐ始まる。この峠は偶然にもチームメンバーの名と同じ「真弓峠」と呼ばれ、1479mの標高があり酸素も薄く感じられた。この付近は、長野県と岐阜県のちょうど境に位置し、太平洋岸式気候と日本海岸式気候の接点となるため、ヒノキをはじめとする樹木とニホンザル、カモシカ、ツキノワグマなどの野生動物が豊富に生息しているらしい。峠付近からは、その雄大な景色の向こうに遠くの山裾を通過していく他チームの姿も眺めることができた。峠を慎重に下るとショートカットするコースに入りまもなくチェックポイントを迎えた。 |
■第四ステージ : アスリートクライム&トレイルラン
"このステージは「アスリートクライム&トレイルラン」と名づけられ、事前の競技説明会と配布されたマップから、沢登りとトレイルランが複合されたランパート最長のコースであることがわかっていた。マウンテンバイクパート後の15分間レストでは、ういろう、バームクーヘン(ユーハイム)の固形物を十分補給し、ボトルにはCCDを準備、恐らくこのレース中一番タフであろうステージに備えた。 パイルが設置されているオンロードを3kmほど走るとスタッフが待機しており、その地点から左側にそびえる山林へと入り沢登りパートが始まった。ここで道向さんの指示により、準備していた沢登り用の渓流シューズに履き替え、水の流れ落ちる岩場と急斜面の険しい登坂を、事前に設置された進路の目印となる白いテープを辿りながら這うように進んだ。山頂に近づき、沢の水が途絶えた所で再びランシューズに履き替え、続くトレイルランへ備えた。山林を抜けると、長く緩やかなアップダウンのある車道が約10km続いた。ここは我々トライアスリートとして一番力を発揮できるコースだった。牽引用ロープの代用として装備した2本繋いだバイクチューブを腰の位置につけ、まず道向さんが、途中から鈴木が真弓さんの補助を行った。この3人のコンビネーションにより、同じ混合のチームの「MIXED NVTS A」と「team CWX」をパス、このステージの中間チェックポイントでの情報は、11位前後の位置につけているということだった。チェックポイント後、2つ目の沢を横切り、水路沿いの森林地帯をひたすら進み、木々の間から遠くに松原スポーツ公園の赤い屋根が見えると、ホッとするとともに次のパートへ向けて気持ちが引き締まっていった。" |
■第五ステージ : カヤック
カヤックのスタート地点となる御岳湖のほとりには5、6チームがすでに待機していた。このステージ到着までには、スタートから10時間、さらに次の最終ステージに進むためには11時間前の制限時間が設けられており、我々の順位でも比較的厳しい通過タイムだった。さらに、ランステージでかなり追い込み、順位を上げた代償は、残りの2ステージに厳しい試練となって現れることになった。湖を1周する約8kmのカヤックパートは、道向さんと鈴木が担当し、中間チェックポイントとまでの約2.8kmのランを真弓さんが担当することにした。これまでのパートの中で一番経験の浅いカヤックは、予想以上に苦戦をしいられ、スタート後直ぐに腕の筋肉はパンパンになり動かず、ポイントとなるブイへは蛇行を繰り返し大きなロスとなった。しかし、何とか気持ちだけは切らさず、賢明に掛け声を合わせ何とかこのパートを乗り切ることができた。 |
■第六ステージ : トレイルラン
そして、いよいよ最終ステージのランが始まった。「ここまできたら必ずゴールテープを切ろう」と道向さんが声をかけると、疲労がピークになりつつも3人の気持ちは一つになった。しかし、ラストの行程は、険しい山林地帯を直登する思いもよらなぬコースだった。頂上の見えない急斜面には、雨の影響か、踏ん張るとそのまま落下してしまう緩んだ岩が点在し、頼って掴んだ木の枝も、時にはあっさり抜けてしまうなど予断を許さない状況が続いた。慎重に進み、やっと山林から抜けた中間チェックポイントでは、すでに制限時間の12時間が迫っていた。「とにかくゴールにたどり着きたい」言葉はなかったが3人が思う気持ちは同じだった。追い討ちをかけるように上り坂が続く中、最後の力を振り絞り道向さんが牽引チューブを取り出し、真弓さんをサポートした。ここまで全力を使い切り、必死で耐えてきた真弓さんも、一歩ごとに苦しい声が漏れ限界に近い状況だった。峠を過ぎ、左右にカーブする山道をどこまでも下っていくと、再びゴールの屋根が見えてきた。3人は絶叫とともに、「ビー、オー、エー!」の掛け声とリズムで一気に元気をとりもどした。そして、DJのアナウンスと関係者や応援者の大きな拍手の中、フィニュッシュゲートをくぐり大きく手をつないで歓喜のゴール。12時間20分のドラマが完結した。 |
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■レースが終わって
完走13チーム、36%という完走率は、今回のコース設定と制限タイムの厳しさを物語っていた。その中で、初出場総合7位の結果は、予想以上に嬉しいものだった。マウンテンバイクパートでの5度に及ぶ激しい落車でおおなダメージを追いながらも、最後まで全力をそそいで立ち向った真弓さんの目からは大粒の涙があふれ出た。3人をまとめ常に先頭に立ち、岩に激突した影響で脚から血を流しながらも、2人を最後まで気遣い続けた道向さんも、安堵の表情を浮かべ喜びに満ち溢れていた。鈴木は、その二人に何度も勇気をもらい、最後まで戦えた達成感で一杯だった。それぞれが今持ちうる最大のものがチーム力となっていい形で現れた今回のレースだった。 最後に、この王滝村という大自然のあるすばらしい環境の中、レースのコース設定から準備に至るまで運営に携わった大会関係者や地元ボランティアの皆様に深く感謝いたします。そして、山本光宏代表をはじめ、応援してくれたチームメンバーの皆さん、本当にありがとうございました。 |