セルフディスカバリーアドベンチャー・王滝村 レポート


 この日、1,100名のマウンテンバイカーは、木曽の奥深い林道で冷たい秋雨に打たれ ながら必死にペダルを漕いでいた。ある者は上位を目指し標高差800mもある山を一 気に駆け抜け、またある者は転倒に泣きながら痛みをこらえて完走を目指す・・・。 9月20・21の両日、今年で3回目を迎えるセルフディスカバリーアドベンチャー100 H&42Hマウンテンバイクと42H&20Hマウンテンマラソンは、長野県王滝村の山々 を舞台に約1,400名のチャレンジャーを迎えて盛大に挙行された。

 普段は地元の人も立ち入ることが制限されている本大会のコースは、この地方特産の 木曽ひのきの積み下ろしに使用される総延長300kmを超す林道で、選手たちには気の 遠くなるような雄大なスケール感を存分に味わわせてくれる国内切っての山岳レース として、多くのアウトドアスポーツファンを魅了している。 午前6時、まず最初に行われたのは100Hのマウンテンバイクレース。600名を超える 選手たちは号砲とともに松原スポーツ公園を一斉にスタートし、市街地を抜けて一路 林道へ。つづいて42Hのレースには初参加を含む約500名のビギナーが滝越えのスタート地点から次々とあとに 続き、こうしてタフでスリリングな長い1日が始まった。

 スタートしてしばらくは延々と続く上り坂。早くもバイクを降りて押しながら進む選 手や、道の窪みでひと休みしながら仲間と談笑する人たちなど、マイペース派も思い 思いにレースを楽しんでいる。一歩一歩ペダルを踏み締めながら行くと次第に辺り一 面視界が開け、雄大なパノラマが眼下に広がる。雲の切れ間からは霊峰御岳山がその 頂を覗かせ、なんとも荘厳な空気が一帯を包み込み、その中を息を切らせ黙々と走る 選手たちはまるで巡礼者のよう。この辺りでは日本カモシカやツキノワグマと遭遇す ることも珍しくなく、また、水量も豊富で岩魚が数多く生息する清流がいく筋も流れ ており、隠れた大自然の宝庫としても知られている。 山々の稜線を縫うように走るマウンテンバイカーはやがて下り坂に差し掛かり、ここ からのガレた山道はまたしても容赦なく選手を苦しめる。どこまでも続く下り坂に両 腕は次第に感覚を失い、ブレーキングもままならなくなっていく。少しでも気を抜け ばハンドルを取られて転倒するし、勢いあまってコースアウトすれば数十mはあろう 谷底が待ち構えているーーー。自然の中に身をゆだね、すべては自分の力で、自分の 責任で走り切る。セルフディスカバリーアドベンチャーとは、まさにそういったレー スなのだ。

 レースも後半に入ったころから雨も本格的に降り出し、選手もいよいよ自分との戦い になってくる。辺りの景色を楽しむ余裕もなくなり、ただひたすら登り下りを繰り返 しゴールを目指す。天候に恵まれた日のレースならコースわきを流れる沢で水浴びを したり、眺めのいい頂でのんびりと休憩をとったりもできるが、雨の日のレースはな かなかそうはいかない。100Hのマウンテンバイクのトップがフィニッシュしてから約5 時間後、この日最後の走者がようやく無事ゴールに辿り着いた。歓喜の雄叫びをあげ る人、意気揚々と誇らし気に帰ってくる人、寒さに震える人、転倒の怪我で顔を歪め ながら生還する人。走り切った選手の表情はさまざまだが、みな大自然の中で精一杯 楽しんだ充実感を胸に、ゴールをあとにした。 今年も王滝の村に、そして山に感謝!
取材 フィールズ・ノノヤマ

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