レポート

ビギナーにおすすすめのショートコース

　日本百名山のひとつである東北の名峰、安達太良山。ここを舞台に繰り広げられるトレイルランニングレースが「OSJ安達太良山トレイル」だ。レースは2日間に分けて開催され、初日に10Kレースが、2日目に50Kレースとエキデンが行われる。　　　
特にビギナーにおすすめなのが10Kレースだ。10kmという距離(実は14kmあるのだが)と、安達太良山山頂直下を経由するコンパクトなコースレイアウトが、トレランビギナーやトレランレースに出るのは初めてという人に最適。はたしてどんなコースなのか知りたくて、今回、選手と一緒に走ることで、10Kレースを体感してきた。
(なお、同日開催予定だった「OSJ安達太良山トレイルキッズ」レースは、コースの一部に被害があり、中止された)

林道、登山道を経て安達太良山へ

　9月3日午前10時、あだたら高原スキー場から198名の選手が一斉にスタート。曇り空のもと、スキー場を背にコースへと入っていく。まずは馬車道と呼ばれる林道を緩やかに上っていく。スタート直後ということもあって、選手たちは束になって元気よく上っていくが、しだいにその束もばらけていく。
　林道を過ぎ、大きな石が積み重なる登山道を上っていくと、木造のくろがね小屋が見えてくる。ここを通過して、さらに行くと、視界が開け、稜線に出る。ガスってはいるが、牛の背と呼ばれる主稜からはまわりの山々が見え、山頂も近い。周辺ではリンドウをはじめ、数々の高山植物を目にすることができる。
　ほどなくして安達太良山山頂直下の広場に到着。天候に恵まれれば、青空のもと、360度の展望が広がる。まわりに遮るものがないこのあたりは風が強いことでも知られるが、今年は風もなく、穏やかだ。なお、国立公園に指定されている安達太良山は山頂周辺を含め保護地区になっていて、10Kレースのコースでは約2㎞の歩行区間がある。ここは走らず、歩いて通過する。歩行区間を終え、あとは峰の辻、勢至平分岐を通過し、もと来た林道を通って、あだたら高原スキー場に戻る。

198名中、195名が完走

　この10Kレースで総合1位に輝いたのが、栗原孝浩選手。タイムは1時間21分33秒。あっという間に帰ってきたという印象だ。女子の第1位は大濱侑季選手。タイムは1時間48分54秒で、2位とはわずか1分差だった。出走者198名のうち完走者は195名。完走率は98.4％。この結果から見ても、ビギナー向けのレースといえるだろう。
　ところで、今回、取材していて気になる選手がいた。千葉県から参加した佐藤隆一さん、79歳。2012年からこのレースに出ていて、今回で11回目。東日本大震災やコロナ禍にあってもレースは途切れることなく開催されてきたこと、その背景には岳温泉観光協会やスタッフの頑張りがあったことに魅せられて、ずっと出続けているそうだ。もうすぐ80歳の誕生日を迎える佐藤さんは、月曜から金曜まで介護福祉士としてデイサービスの仕事をしている現役の仕事人でもある。走っている途中、林道でお会いしたが、ちょっと苦しそうで、大丈夫かなぁと心配していた。佐藤さん自身、今までの中で一番きついと感じていたようだ。だが、あと5分でレース終了という時に、残りの走者の中に79歳の男性がいるという情報が。佐藤さんに違いないと確信し、ゴールで待つ。カウントダウンが始まる中、遠くに佐藤さんの姿が。タイムは3時間59分8秒、制限時間1分を切ってゴールに飛び込んだ。
　老いも若きも、みんなで楽しんだ「安達太良山10K」。明日は50Kが開催される。

取材・文／高橋　寿子

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